ターンの本質
ターンの仕組みについて、特に両脚荷重という観点から簡単な力学的な視点で考えを巡らせてみたいと思います。
スキーで斜面を滑走する際の力学的メカニズムは、重力による位置エネルギーを運動エネルギーに変換し、それを回転運動へと導くことにあります。この過程で最も重要となるのが、スキー板のたわみを活用したターン運動です。スキー板は、サイドカーブ(スキーの中央部が細く、トップとテールが広い形状)と適度な縦方向の柔軟性を持つよう設計されています。この構造特性により、適切な荷重がかかった時にたわみが生まれ、ターン運動が可能となります。
たわみの重要性
スキー板は「ズレ」をコントロールすることで方向転換を可能にしています。適切な荷重によってスキーがたわみ、トップがターン内側に食い込み、テールがターン外側にズレることで、スムーズなターンのコントロールが実現します。たわみはターンにおいて必要不可欠な要素であり、これなしではスキーの持つ本来の性能を引き出すことはできません。
荷重の分散による問題
ターン運動において、私たちは体重という限られた資源を持っています。両脚荷重の場合、この体重を2本のスキー板に分散させることになり、それぞれのスキーへの荷重が必然的に減少することになります。特に外スキーへの荷重が不十分になると、スキー板を十分にたわませることが難しくなってしまいます。
荷重不足による弊害
その結果、滑り手はターンの際に、無意識のうちに荷重不足を補うために過度に雪面に対してエッジを立てる動きを見せるかもしれません。このような対応は不必要な抵抗を生み、バランスを崩すリスクを高めることになります。
テレマークスキーにおける問題
テレマークスキーでは、両脚荷重の考え方が主流となっています。これは前後に脚を開いた特徴的な姿勢の中で、両方のスキーの特性を活かそうとする試みとも捉えることができます。しかし力学的な観点からすると、限られたリソースである体重をどのように配分することが最も効率的にスキー板のたわみを引き出せるのか、という問題に直面します。
結論:外スキー主体の必然性
スキー板のたわみという基本原理に立ち返って考察すると、その性能を引き出すためには外スキー(=前脚)に荷重するほかないことが分かります。内スキー(=後脚)がターンにおいて直接的にスキーの方向を変えることに寄与することはありません。スキーの基本原理から外れた動きは、必然的に過剰な筋力を必要とします。 効率的で疲れない滑りは実現しないでしょう。